住宅ローンは、一般の消費者が金融機関から最も低金利で融資が受けられる制度です。融資金額は『人生最大』であり、融資期間は『人生最長』だからこそ、住宅ローンは簡単に決めずにしっかり学んで(敵を知る)絶対に後悔のないローンを組みましょう。

住宅ローンの種類と特徴

種類 借⼊先 特徴
⺠間住宅ローン ⺠間銀⾏、保険会社等
  • 借⼊条件、⾦利が⾦融機関により異なる。
  • 原則として団体信⽤⽣命保険に加⼊義務がある。
  • 保証料がかかる。
公的住宅ローン 国、⾃治体
  • 財形住宅融資、⾃治体融資の2種類がある。
  • ⾃治体融資は⾃治体により異なる。
証券化ローン(フラット) 住宅⾦融⽀援機構⺠間⾦融機関の提携(窓⼝は⺠間⾦融機関・信⽤組合、農協、保険会社、不動産会社など多数)
  • 全期間固定⾦利型(⾦利窓⼝により違う)
  • 収⼊制限がない(収⼊の少ない⼈には⼼強い)。
  • 加⼊する団体信⽤⽣命保険により⾦利が異なる。
  • (2017年10⽉より団信付きの⾦利設定になった。)
  • 家の性能により⾦利優遇が受けられる。
  • 本⼈以外親、⼦、等のための家でも借り⼊れ可能。

どんな時に貸してもらえるのか

  • 自分(ローン申込者)が住宅を取得する時。
  • 親、祖父母、子、孫が住宅を取得する時。(フラット35:親入居型、子入居型)

どんな人が貸してもらえるのか

  • 安定した収入のある方
  • 専業主婦、年金収入だけ、無職の方は借りることが出来ない
  • パート、アルバイト(民間銀行はNGが多く、フラット35は審査対象)
  • 契約社員、派遣社員(民間銀行は各行対応が違う。フラット35は審査対象)

※パート、アルバイト、契約社員、派遣社員ともに健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者であることが条件になります。

  

住宅ローンの金利タイプ

住宅ローンは、3タイプの⾦利タイプがあります。それぞれのメリット、デメリットを知って⾃分達に合った⾦利タイプを考えましょう。

住宅ローンの⾦利タイプと特徴

種類 特徴 メリット デメリット
変動⾦利
  • ⾦利が6ヵ⽉毎に⾒直される
  • 返済⾦額は5年後とに⾒直される
  • ⾦利の上昇とかかわりなく、返済額は125%以内に設定される
⼀般的に⾦利が最も安い。
返済期間内に市場⾦利がさがれば適⽤になる
  • 市場⾦利が上がると、適⽤返済額が増加
  • 資⾦計画が⽴てにくい
全期間固定⾦利 ローン完済まで同じ⾦利が続く
  • 返済期間中返済額がかわらないので資⾦計画や⽣活設計が⽴てやすい
  • 市場⾦利が上がっても影響を受けない
  • フラット35は繰り上げ返済、保証料が無料
  • 返済期間中に市場⾦利が下がっても適⽤されない
  • 変動⾦利と⽐較すると⾦利が高め
固定期間⾦利選択型 1年、3年、5年、10年等選択した期間の⾦利が固定される。期間終了後、固定期間⾦利選択型か変動⾦利を選択する 定期的に(選択した期間終了後)⾦利の⾒直しができる。⼀定期間固定なので,資⾦計画⽴てやすい
  • 固定期間内に市場⾦利が下がっても適⽤されない
  • 選択期間終了後、市場⾦利が幅に上がる可能性がある

住宅ローンの⾦利タイプと⾦利決定の要因

3つの⾦利タイプがどのように決定するかを知り、ローンの選択やローン開始後の注意ポイントを知りましょう。
※原則として、銀⾏は調達したお⾦を貸して、差額の利ザヤが利益となります。

住宅⽀援機構と⺠間⾦融機関が提携するローン。⺠間が融資した債権を⽀援機構が買い取り、それを証券化して投資家に販売する⇒銀⾏はリスク無いので⻑期間融資ができる

種類 基になる⾦利 特徴 リスクはだれにある
変動⾦利 短期プライムレート(政府⽇銀が銀⾏に融資する時の政策⾦利に連動している) 銀⾏は融資を受ける⾦利が上昇すれば、住宅ローンの変動⾦利を上げて、融資を受ける⾦利が下降すれば、住宅ローンの変動⾦利を下げます
⾦利変動のリスクを負うことなく⼀定の利ザヤを得ることができます
⇒⾦利が最も安い
ローン利⽤者がリスクを負う⇒変動⾦利利⽤者は⽇銀が決する政策⾦利に注視する必要があります
全期間固定⾦利(銀⾏) 10年国債⾦利 銀⾏から融資を受けているときの⾦利の上下に住宅ローン⾦利は連動しない
⇒⾦利を⾼めに設定する(リスクヘッジ)
リスクは銀⾏にある
フラット35 10年国債⾦利 リスクは銀⾏にも、ローン利用者にもない
固定期間選択型 円⾦利スワップレート
(⾦利の交換)
変動⾦利と固定⾦利を交換しても釣り合う⾦利に連動している。(変動⾦利と固定⾦利の均衡するところの金利で決定する) ローン利⽤者がリスクを負うが、銀行も⼀部リスクを負う

住宅ローンの⾦利タイプと選択のポイント

3つの⾦利タイプがどのように決定するかを知り、ローンの選択やローン開始後の注意ポイントを知りましょう

種類 タイプ
変動⾦利 ⾦利上昇のリスクに耐えられる⼈(返済負担率が10%台)

  • 融資⾦額が少ない、また返済期間が短い
  • 将来的に収⼊が増える可能性が⾼い(昇給、配偶者が働く等)
  • 将来的に⽀出が減る予定がある(⼦供の教育費負担が減るなど)
  • ⾦利上昇のリスクに備えた貯蓄ができる
  • 全期間固定型と変動⾦利型を⽣活サイクルに合わせて組み合わせて融資を組む
全期間固定⾦利
フラット35
毎⽉の返済負担率が⽐較的⼤きい⼈(返済負担率25%以上)

  • これから教育費など⼤きな⽀出の可能性が多い
  • 将来の収⼊アップがあまり期待できず、現状の⽣活を維持したい
  • ⾦利の変動などに注視したり、返済額の増加に気を使わず安⼼して⽣活したい
固定期間選択型 毎⽉の返済負担が⼤きくても、⼦供が中学⽣などの場合

  • ⼦供の教育期間は安定的に返済し、その後の家計事情で変動か固定か決めたい
    ※現在は全期間固定より⾦利が安いが15年以上の固定期間選択の場合は、フラット35とその他の条件も併せて検討してみましょう。

住宅ローンの返済方式

住宅ローンは、返済⽅式が2種類あります。まず、それぞれのメリット、デメリットを知ることが⼤切です。

返済⽅式 特徴 メリット デメリット
元利均等⽅式 元⾦分と利息分を合わせた⼀定の⾦額を返済する 返済額が固定しているので返済計画が⽴てやすい 利息分の⽀払いが多くなる
元⾦均等⽅式 毎⽉同額の元⾦に利息を加えた⾦額を返済する 返済総額が安い 初期段階の返済額が多い

元⾦均等⽅式は、毎⽉の⽀払額の中で、返済初期は利息分が多く元⾦は少ない。そのためローン期間前半は元⾦があまり減りません。後半になと元⾦が増えていきます。結果的に元⾦均等払いと⽐較して利息分の⽀払いが多くなり、⽀払総額も多くなります。

返済方式のよる返済額の違い

住宅ローンは、返済方式によって返済総額が違ってきます。返済総額を比較して考えましょう。

条件︓借⼊額3000万円、固定⾦利1.5%、返済期間35年

返済額/月 10年後の残高 返済総額 返済総額差額
元利均等方式 91,855円 22,967,470円 38,579,007円
元金均等方式 108,928円(第1回目) 21,428,640円 37,893,605円 -685,402円

条件が同じでも返済⽅式により、返済総額に差があることがわかりました。⾦利が上がるほど、返済総額の差も⼤きくなります。では、⾃分に合う⽅式はどちらでなのでしょうか。⾃分達の収⼊や⽀出の変化(昇給、共働き、⼦育て資⾦等)を考慮して、どちらが適しているのかを考えます。

返済総額の少ない元⾦均等⽅式を選択するポイントは、
  • 初期の返済額を無理なく返済できるのか︖無理をすると住宅ローン以外に⽣活費のためにローンを組んだり、厳しい資⾦繰りで家庭内がギスギスすることも…
  • 初期の返済額に負担を感じるならば、元利⾦⽅式でスタートしてから余裕資⾦で繰り上げ返済行って、⽀払総額を減らしましょう。
元⾦均等払いに向く⼈
余裕があるうちに残⾼を減らしておきたい⼈

  • ⼦育て期間が終了して、今後負担になる出費の予定がない⼈
  • 共働き家庭で⼦供が⼩さく⼤きな教育費が掛かる時期より前に残⾼を減らしたい⼈
元利均等⽅式に向く⼈
毎⽉⼀定額を返済し⽣活設計を⽴てたい⼈

  • 年齢的にまだ若く収⼊が少ない⼈
  • 現在は共働きだが、近年出産の予定があり、⼦供が⽣まれたら共働きをやめる家庭
  • 近年に⼤きな⽀出(⼦供の⼤学進学など)が予測される⼈

住宅ローンの金利決定時期

⾦利決定時期は以下の2タイプがあります。

  • 申込時⾦利:住宅ローンを正式に申し込んだ時点での⾦利 (財形住宅融資)
  • 実⾏時⾦利:実際に融資が実⾏される時点での⾦利(フラット35、ほとんどの⺠間⾦融機関)

金利決定イメージ

手続き 建物売買(請負)契約 引渡し(所有権、抵当権設定登記)
民間銀行
フラット35
ローン申込み 融資決定 金消契約 (つなぎ融資) 融資実行
財形融資
機構融資
ローン申込み 融資決定 金消契約 (つなぎ融資) 融資実行

住宅ローンの諸経費

住宅ローンは⾦利だけでなく、保証料などの諸経費も⽐較しましょう。適⽤⾦利、総返済額と諸経費をトータルで考えて住宅ローンを選択しましよう。

保証料 団体信⽤⽣命保険 事務⼿数料 繰り上げ返済⼿数料
⺠間銀⾏
  • ⾦融期間により異なる
  • 同じ⾦融機関でもローン申込者の属性により異なる
  • 融資額の2%程度の場合が多い
加⼊することが必須(⾦利に含まれている) ⾦融機関により異なる ⾦融機関により異る
フラット35 無料 ⾦利に含まれている(2017年10⽉より変更) 窓⼝の⾦融機関により異なる 無料

※繰り上げ返済を計画的に実施したい⼈は、繰り上げ返済の最低金額(金融機関により異なる)と返済手数料も重要な要素になります。(繰り上げ返済はまとまったお金が貯まるのを待つよりも、一定以上の金額でこまめに返済していった方が、結果として元金が早く減ることも多い)

住宅ローンを組む前に大切なこと

住宅ローンは、「なるべく少なく、なるべく短く借りる」というのがローン負担を減らす原則です。
一方で理想の住まいを手に入れるためにどうしても必要な予算があります。
 
金融機関は返済負担率等から、融資可能額を算出します。それを「借りられる額」とすると、これから安定した生活を送りながら返済できる金額を「返せる額」とします。
 
住宅ローンは、以下の「3つの金額の攻めぎ合い」です。

  • 住まいづくりに必要な金額
  • 金融機関が融資してくれる融資額「借りられる額」
  • 安定した生活を確保するための「返せる額」

これからの収支の動向、頭金や贈与の資金、子供の教育費、老後の生活、そして生活の楽しみとも言える趣味や旅行の費用、車の買い替え費用等も含めてしっかり生活設計を立てましょう。
 
生活設計を立てながら、返済額に無理がないか。何を大切にして何をあきらめることができるのか。
専門家のアドバイスを受けながら計画を立てれば、住宅ローンおそるるに足らずです。